『主なき金柑』

うちの階下に住んでいた、老夫婦が育てていたキンカンが、

今年もまた ぎっしりと実をつけました。

老夫婦は、60歳を過ぎてからの再婚で、

おじちゃん(実際はおじいちゃんなんだけど、

私はおじちゃん・おばちゃんって呼んでました)が

おばちゃんのコトが大好きで、

80歳になっても手をつないで歩いていたし、

立ち話をする度に、いつもノロけていた 素敵なご夫婦。

数年前の5月におばちゃんが息を引き取り、

おじちゃんは毎日ひとりで買い物したり、お散歩したり。
ラブラブな二人暮らしが急に一人になる淋しさは、

想像もつきません。

そして、昨年2月…。

おじちゃんは、ベッドに入ったまま眠るように

おばちゃんの元へ旅立ちました(浄土宗)。
ホントに安らかな、穏やかな眠ったままの姿でした。

 

 

 今年は何故かしら、 この金柑から

 おじちゃんとおばちゃんの声が 聞こえてくるんです。

 

「京子ちゃん、元気にしてる?しんちゃんも元気?」って。

 

 あと ひと月もすると、

 今度は おばちゃんの あじさいが 咲きます。

 

 人は亡くなるけれど、思いはいつまでも生き続ける…って、

 きっと、こういうことなんでしょうね。