3『喪主の挨拶 ①』

話慣れていない方の為に 喪主様の挨拶には、各葬儀社オリジナルの定型文があり、

もう、すっかり 暗唱できてしまうほど 聞きなれたものですが、

中には、フリートークで 話される方が いらっしゃいます。

その中には、更に プロも脱帽するような、すごい話をしてくださる方も…。

 

思いを、ホントに上手に表現されて、思わず涙があふれてしまいます。

 

 

 電車が大好きだった幼い僕と弟を連れて、ある日 父が 憧れの新幹線に乗せてくれました。

ある駅で、父は駅弁を買う為に 停車中の新幹線を降り ホームの売店へ。

「ここで 待っているんだぞ。」

ところが、今思えば ほんの2~3分のことだったんでしょうが、当時の僕たちにはとても長い時間に感じられました。

中々戻ってこない父に 不安で待ちきれなくなった僕たちは、思わずホームへ降りてしまった。コロコロコロ~と発車の合図があり 動き始めて行く新幹線の窓には なんとこちらに向かって何かを叫んでいる 僕たちの探していた父の姿がっ!!!

父が連絡をしてくれて、僕たちは 駅員の人に保護されて、引き返してくる父を待っていました。

とてもとても長い時間に感じたことを、今でもはっきり覚えています。

そして…。

引き返してきた父は、僕たちに向かって

「バカっ!!!『ちゃんと席で待ってろ』って 言ったじゃないかっ!!!」と一喝!!!

そして、ギュッと抱きしめて、「悪かったな。お父さんが遅くて心配だったんだな。待たせてごめんな。」

 

昨日また、父が僕たちの前から姿を消しました。

もう一度、「待たせてごめんな。」って、目の前に現れてほしい。

 

今度はいつか、自分が父のいる場所へ逝き、「待たせてごめんな。」と言いたいと思います。